症例報告
右心房に腫瘍栓を有する肝細胞癌に対して体外循環下に肝切除と腫瘍栓除去を行った1例
都築 俊治, 川田 光三, 上田 政和, 高橋 伸, 中安 邦夫, 石井 裕正1), 平松 京一2), 田代 征夫3)
慶應義塾大学医学部外科, 内科1), 放射線科2), 病理3)
肝静脈から右心房にわたる腫瘍栓を有する肝細胞癌は切除不能と考えられ,患者は短時日の間に死亡するのが常であった.これらの患者を手術するためには,体外循環下に肝切除と腫瘍栓の除去を行わなければならないが,種々の困難な問題がある.左葉内側区域に直径4 cmの腫瘍を有する57歳の男性の肝硬変併存肝細胞癌患者に中肝静脈から右心房に及ぶ腫瘍栓が発見された.体外循環下に左葉内側区域と右葉前区域の一部切除とともに腫瘍栓の除去が行われた.患者は術後経過良好で退院したが,残存肝の再発のため術後5か月で死亡した.このような手術が可能であることが判明したが,今後の問題は長期生存例が得られるか否かである.
索引用語
hepatocellular carcinoma, tumor thrombus in the right atrium, liver resection
日消外会誌 24: 2236-2240, 1991
別刷請求先
都築 俊治 〒160 新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部外科
受理年月日
1990年7月10日
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