症例報告
水分電解質異常と著明な低蛋白血症を主症状としたS状結腸癌による腸重積の1例
赤松 大樹, 亀頭 正樹, 藤田 宗行, 大川 淳, 吉龍 資雄
市立芦屋病院外科
成人の腸重積症は全体の約5%を占めまれである.臨床症状としては腹痛,腹部膨満,下血などが多い.今回われわれは多量の粘液下痢のために水分電解質異常および著明な低蛋白血症を呈したS状結腸癌による腸重積の1例を報告した.症例は64歳の男性.入院時多量の粘液下痢による脱水のために全身状態は不良であった.下痢が消失した後に施行したS状結腸内視鏡では明らかな病変を認めず,外来で経過観察していた.3か月後に同様の症状にて再入院.大腸内視鏡検査にてS状結腸癌による腸重積と診断しS状結腸切除術を施行した.
腸重積で粘血便が主訴となることは多いが,自験例では重積部位が肛門に近く多量の粘液が結腸による再吸収を受けずに体外に排出され,大腸絨毛性腫瘍におけるdepletion syndromeに似た病態を呈したものと考えられる.重積時には内視鏡検査により容易に診断されるが,本症例のように自然解除した場合には注意が必要である.
索引用語
intussusception, carcinoma of colon, depletion syndrome
日消外会誌 24: 2284-2287, 1991
別刷請求先
赤松 大樹 〒659 芦屋市朝日ヶ丘町39-1 市立芦屋病院外科
受理年月日
1991年3月13日
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