卒後教育セミナー
胃を用いた頸部食道癌切除再建法
井手 博子
東京女子医科大学消化器外科
1976年から1990年9月までに切除した下咽頭頸部食道癌64例を対象とし,胃管再建例の有用性を検討した.食道全摘を行ったのは39例で,平均年齢は64歳,Ce~CeIu癌を中心に施行された.根治性の面から食道全摘も部分切除も適応に差を認めなかった.再建臓器は食道全摘例の92%,全切除例の56%に胃管が用いられた.一方,遊離空腸移植は全切除例の38%に行われた.食道抜去胃管再建例の合併症発生率は31%で遊離空腸移植例の18%に比べやや高率であった.食道全摘例の断端癌遺残率は低く特に肛門側癌遺残はない.食道全摘例の33%に多発癌をみた.下咽頭頸部食道癌C≧1切除例の5生率は食道抜去胃管再建例で41.7%,遊離空腸移植例では26.2%であった.多発癌合併例が多い点から,頸部食道癌の再建法として胸部食道抜去し胃管で再建する方法は,胃に病変がなければどこの施設でも容易かつ確実に行える有用な再建法である.
索引用語
cancer of the hypopharynx and carvical esophagus, blunt dissection without thoracotomy, reconstration with stomach
日消外会誌 24: 2293-2298, 1991
別刷請求先
井手 博子 〒162 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学消化器外科
受理年月日
1991年4月17日
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