症例報告
選択的動脈内secretin注入試験と術中secretin負荷試験により根治切除を行いえた十二指腸壁内悪性gastrinomaの1例
柴田 近, 佐々木 巌, 内藤 広郎, 舟山 裕士, 神山 泰彦, 高橋 道長, 福島 浩平, 瀬上 秀雄, 土井 孝志, 岩附 昭広, 大谷 典也, 古川 徹, 松野 正紀, 野村 泰輔*, 海野 倫明**, 岡本 宏**
東北大学医学部第1外科, 同 心療内科*, 同 第1医化学**
症例は35歳の女性で悪心・嘔吐を主訴とし,空腹時血漿ガストリン値が高値,セクレチン負荷試験陽性でZollinger-Ellison症候群と診断された.腹腔動脈造影にて膵頭部に腫瘍濃染像を認め,選択的動脈内セクレチン注入試験により胃十二指腸動脈が栄養動脈と判断された.術中所見として,膵頭部に3個の腫瘤を認め,うち1個は術前の血管造影時の腫瘍濃染像と一致すると思われた.手術は膵頭十二指腸切除を施行し,腫瘍切除後の術中セクレチン負荷試験では陰性であることを手術終了前に確認した.組織学的検索にて,ガストリノーマ原発巣は直径5 mm大で十二指腸粘膜下に存在し,術中に認めた腫瘤はそのリンパ節転移と診断された.術後5か月目のセクレチン負荷試験でも陰性であった.本症例では選択的動脈内セクレチン注入試験と術中セクレチン負荷試験の併施により腫瘍の完全切除を行いうると考えられた.
索引用語
Zolinger-Ellison syndrome, selective arterial secretin injection test, pancreatoduodenectomy
日消外会誌 24: 2414-2418, 1991
別刷請求先
柴田 近 〒980 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学医学部第1外科
受理年月日
1991年5月8日
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