症例報告
選択的ウロキナーゼ動注療法が有効であった急性上腸間膜動脈閉塞症の1例
吉田 寛, 恩田 昌彦, 田尻 孝, 金 徳栄, 岡崎 滋樹, 梅原 松臣, 真々田 裕宏, 谷合 信彦, 西久保 秀紀, 寺本 忠, 田島 廣之*, 隈崎 達夫*, 恵畑 欣一*
日本医科大学第1外科, 同 放射線科*
急性上腸間膜動脈閉塞症(根部完全閉塞)に対し,発症後早期にウロキナーゼを動注し,回盲部切除のみで救命しえた症例を経験したので報告する.症例は56歳男性で,10年来の心房細動,十二指腸潰瘍,一過性の右片麻痺があった.突然の腹痛を主訴に,発症3時間後に来院.腹部所見,腹部単純X線,既往歴より上腸間膜動脈閉塞症を疑い,発症4時間後に緊急血管造影を施行し,上腸間膜動脈本幹の完全閉塞を認めた.選択的ウロキナーゼ短時間大量動注療法(60万単位/時間,1時間)にて造影像の著しい改善と症状の消失を認めたため,さらに持続動注療法(2万単位/時間,9時間)を施行した.翌日,下血,右下腹部痛が出現し,再度血管造影を施行.回結腸動脈末梢に無血管野を認めたため,発症18時間後開腹し,盲腸部の壊死を認め回盲部切除施行し短腸症候群を回避しえた.術後,下血は消失し,血管造影,小腸造影でも異常所見を認めず,経過良好にて退院となった.
索引用語
acute superior mesenteric arterial occlusion, urokinase infusion, acute abdomen
日消外会誌 24: 2466-2470, 1991
別刷請求先
吉田 寛 〒113 文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
1991年4月17日
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