進行胃癌治癒切除後の予後に及ぼす輸血の影響―多変量型生存解析を用いた検討―

市倉　隆, 冨松　聡一, 伊藤　英人, 岩屋　啓一, 藤野　啓一, 猪川　弘嗣, 大草　康, 玉熊　正悦

防衛医科大学校第1外科

　手術前後の輸血が胃癌切除後の予後と関連するか否かを検討した．教室における初発進行胃癌治癒切除症例を入院中の輸血について非輸血群144例，輸血量1,000 ml未満の少量輸血群72例，1,000 ml以上の大量輸血群69例に分けて比較すると，大量輸血群の生存率は非輸血群に比べ有意に低かった．両群間に進行程度の差がみられたため因子別に検討すると，深達度漿膜下層（ss）以上の症例およびリンパ節転移がないか1群までの症例で大量輸血群の生存率が非輸血群に比べ低かった．ss以上の症例では両群間に深達度，リンパ節転移の差はなかった．さらにss以上の症例について生存率に関与しうる11の臨床病理学的因子を選びCoxの比例ハザードモデルによる解析を行うと，周術期の輸血はリンパ節転移，腫瘍最大径，静脈侵襲とならんで有意に予後と関連していた．以上より進行胃癌治癒切除例，特に深達度ss以上の症例では周術期における輸血が切除後の生存率を悪くする可能性が示唆された．

索引用語
blood transfusion, gastric cancer, postoperative survival rate, Cox proportional hazard model

別刷請求先
市倉　隆　〒359　所沢市並木3-2　防衛医科大学校第1外科

受理年月日
1991年6月5日

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