症例報告
食道カルチノイドの1治験例
米川 甫, 島 伸吾, 寺畑 信太郎*, 玉井 誠一*, 田中 勧
防衛医科大学校第2外科, *同 検査部
64歳の男性に発生した食道カルチノイド腫瘍の1例を報告した.患者の主訴は嚥下時痛で,上部消化管の検査で中部食道に潰瘍をともなう長さ5 cmの限局型の腫瘍が見いだされた.腫瘍の辺縁は粘膜を被りわずかに隆起し,潰瘍は浅く,底部は小結節状で易出血性であった.手術所見として腫瘍は食道外膜に浸潤し,上縦隔・肺門部にリンパ節転移が認められた.術式としては右開胸開腹・胸部食道全剔・胸骨後食道胃吻合術を施行した.
切除標本の病理所見はcarcinoid tumor,外膜浸潤陽性(a2),脈管浸潤陽性(ly(+),v(+))で,リンパ節転移は上縦隔(#106),肺門部(#107),傍中部食道(#108),胃小弯(#3)に陽性であった.本例に対しては術後に50Gyの頸部.上縦隔照射を行ったが,患者は術後12か月で肺炎のため死亡した.
索引用語
carcinoid tumor, carcinoid tumor of the esophagus
日消外会誌 24: 2555-2559, 1991
別刷請求先
米川 甫 〒157 世田谷区大蔵2-10-1 国立大蔵病院外科
受理年月日
1991年6月5日
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