症例報告
胸部上部食道の狭窄および潰瘍を伴ったBarrett食道の1例
上松 俊夫1), 北村 宏, 岩瀬 正紀, 小栗 孟, 二村 雄次2)
1)磐田市立総合病院外科, 2)名古屋大学第1外科
胸部上部食道の狭窄および潰瘍と著明な貧血を伴った典型的なBarrett食道の1例を報告する.症例は58歳の女性.主訴は嚥下困難と易疲労感.一般血液検査ではHb2.7 mg/dlと高度の貧血を呈していた.食道造影では,大動脈弓の高さの胸部上部食道の輪状狭窄と滑脱型食道裂孔ヘルニアを認めた.食道内視鏡検査では切歯列より23 cmの位置に全周性の狭窄と潰瘍を認め,生検にて狭窄より肛側の食道に円柱上皮を認めた.手術はNissen Fundoplicationと術中拡張術を施行した.術後経過は良好でその後愁訴を認めなかった.また術後7年間の経過観察で,潰瘍や狭窄の再発を認めず,Barrett食道自体の進展,退縮も認めていない.Barrett食道は腺癌の前癌病変と考えられており,たとえ手術による逆流防止が成功してもその術後フォローアップは重要であると考えられた.
索引用語
Barrett's esophagus, esophageal stricture, antireflux operation
日消外会誌 24: 2560-2564, 1991
別刷請求先
上松 俊夫 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第1外科
受理年月日
1991年5月8日
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