特集
食道粘膜癌に対する内視鏡的粘膜切除術の適応と限界
幕内 博康1), 2), 町村 貴郎1), 宋 吉男, 水谷 郷一, 島田 英雄, 徳田 裕, 杉原 隆, 佐々木 哲二, 田島 知郎, 三富 利夫, 大森 泰2), 三吉 博
東海大学外科1), 慶應がんセンター2)
近年,診断技術とくに色素内視鏡の進歩により,食道表在癌はもとより食道粘膜癌も増加してきた.粘膜癌で粘膜筋板に達しないものでは脈管侵襲やリンパ節転移をきたすことも極めてまれである.そこで内視鏡的粘膜切除術の適応を,(1)粘膜筋板に達しない粘膜癌,(2)長径2 cm以下,(3)食道全長に多発していないもの,とした.
われわれは18例23病巣に内視鏡的粘膜切除術を施行しており,このうち表在癌は15例19症巣であった.
手技は,(1)ヨード染色により病巣の範囲を確認し,(2)病巣周囲にマーキングを行い,(3)インジゴカルミン・エピネフリン加生食水を粘膜下に注入し,(4)内視鏡的粘膜切除術を施行して組織を回収し,(5)再度ヨード染色で切除範囲を確認するものである.
皮下気腫をきたした1例以外合併症はなく,穿孔例や緊急手術の適応となったものはない.本法の発展普及と食道癌の予後改善を期待する.
索引用語
endoscopic mucosectomy, strip biopsy for esophageal carcinoma, mucosal carcinoma in the esophagus
日消外会誌 24: 2599-2603, 1991
別刷請求先
幕内 博康 〒259-11 伊勢原市望星台 東海大学医学部外科
受理年月日
1991年7月3日
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