慢性膵炎の外科治療―膵切除術の適応と限界，術式の工夫―

鈴木　衛, 羽生　富士夫

東京女子医科大学消化器外科学教室

　過去22年間に教室で手術した慢性膵炎255例のうち膵全摘（以下TP）8例，膵頭部切除（PHR）104例，膵尾部切除（DP）45例の治療成績を，同時期に行った膵管減圧術（PJ）56例と比較した．手術死亡はTP，DPではみられず，PHRで2例1.8％，PJで1例0.8％であった．術後の平均経過観察期間は，TPで4.1年，PHRで4.2年，DPで5.6年であった．疼痛除去はいずれの術式でも90％以上に良好な成績であった．術後の糖尿病は，TPでは100％，PHRで23％，DPで51％，PJで44％で，PHRの術後糖尿病の合併率は低かった．術後5年の生存率は，TPで46％，PHRで82％，DPで92％，PJで82％で，10年ではそれぞれ25％，72％，66％，62％と差はなかった．栄養障害，糖尿病などによる晩期死亡は，TPで5例63％，PDで8例7.7％，DPで4例8.8％，PJで4例7.4％とTP以外は術式による差はなかった．慢性膵炎に対する膵切除術は安全な術式であり，疼痛除去効果は良好で，さらに術後遠隔時の生存率や晩期死亡率も膵管減圧術と差はなかった．

索引用語
pancreatic resection, pancreaticojejunostomy, early and late postoperative results

別刷請求先
鈴木　衛　〒162　新宿区河田町8-1　東京女子医科大学消化器病センター

受理年月日
1991年7月3日

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