慢性膵炎の外科治療―膵管減圧手術と膵切除術の成績―

清水　康一, 岩佐　和典, 伊与　部尊和, 桝谷　博孝, 浦出　雅昭, 橋本　哲夫, 桐山　正人, 八木　雅夫, 泉　良平, 宮崎　逸夫

金沢大学第2外科

　1967年から1989年までに金沢大学第2外科にて経験した慢性膵炎確診例のうち，膵管減圧手術例43例（膵管口形成術9例，膵管空腸側々吻合術34例；減圧群）と膵切除術施行例25例（膵体尾部切除術18例，膵頭十二指腸切除術6例，膵全摘術1例；膵切群）について，その成績を検討した．除痛効果は，減圧群の88.4％，膵切群の84.0％が改善例で，術式による差はみられず，悪化例はすべてアルコール性の症例であった．術後の社会復帰は，短期間では両群で差がみられなかったが，2年以上の長期経過例では，糖尿病や栄養障害のため社会復帰できない症例が膵切群に多く認められた．術前後の膵外分泌機能（PFD試験）は，減圧群では58.7％から65.0％へ改善し，膵切群では60.0％から51.7％ヘと悪化した（p＜0.05）．膵内分泌機能（経口糖負荷試験）も，減圧群では改善例がみられたが，膵切群では悪化例が多かった．以上より，慢性膵炎の手術術式としては，膵機能の保持，改善が期待できる膵組織を温存した膵管減圧手術を選択すべきと考えられる．

索引用語
surgical treatment for chronic pancreatitis, pancreatic duct drainage operation, pancreatic resection

別刷請求先
清水　康一　〒920　金沢市宝町13-1　金沢大学医学部第2外科

受理年月日
1991年7月3日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です