慢性膵炎における手術術式の選択―特に切除膵の自家移植について―

田村　勝洋, 金　聲根, 長見　晴彦, 中瀬　明

島根医科大学第1外科

　慢性膵に対する術式の選択では確実な除痛と膵機能の温存を考慮すべきである．アルコール性石灰化慢性膵炎のびまん性石灰化巣は末梢小膵管内の石灰化protein plugであり主膵管の減圧は無効で拡張の有無にかかわらず病巣切除の適応と思われる．そのほか腫瘤形成型膵炎，主膵管非拡張症例，吻合に適さない嚢胞や出血性嚢胞などは病巣切除の適応である．このうち，大量膵切除となった場合に切除膵を自家移植したが，脾動静脈を血管茎とする部分膵移植であり最大移植可能範囲は門脈左縁より尾側であった．移植は永続的除痛効果を得るために異所性に行ったがこれによる膵機能維持上の不都合はみられなかった．移植膵は空腸に吻合し腹膜外ポケットに置いた．4症例に本法を適応したが，術後74か月を最長に全例とも移植膵は生着機能し，良好な除痛効果と術前と同程度の膵内外分泌機能が得られ，完全社会復帰を果たしている．

索引用語
heterotopic autotransplantation of the resected pancreas segment, massive pancreatectomy for chronic pancreatitis, diffuse calcified chronic pancreatitis

別刷請求先
田村　勝洋　〒693　出雲市塩治町89-1　島根医科大学第1外科

受理年月日
1991年7月3日

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