原著
80歳以上の胃癌切除症例の検討
山口 正秀, 沢井 清司, 岡野 晋治, 佃 信博, 清木 孝祐, 谷口 弘毅, 萩原 明於, 山根 哲郎, 山口 俊晴, 小島 治, 高橋 俊雄
京都府立医科大学第1外科
1972年から1990年までの80歳以上の胃癌切除症例44例について検討した.
(1)組織学的進行度はstage1が40.9%と比較的多かったが,stage 4も25.0%に認めた.(2)術前合併症は43.8%と高頻度に認め,術後合併症も43.8%の高頻度に認めたが両者の間に相関は認められなかった.(3)術死は4.5%,術死を除く42例の5年累積生存率は46.1%であった.(4)漿膜浸潤陰性胃癌の5年累積生存率は60.6%で,漿膜浸潤陽性胃癌の23.9%と比べて有意差を認めたが,リンパ節郭清R01とR2の間に,生存率の差は認められなかった.(5)漿膜浸潤陰性胃癌では遠隔時死亡の83%(10/12)が他病死していたのに対し,漿膜浸潤陽性胃癌では88%(7/8)が癌再発による死亡であり有意差(p<0.05)を認めた.したがって,前者に対してはR1程度の安全な手術を行って注意深い術後の経過観察を行うことが重要であり,後者には安全性を確保しつつ根治性の高い術式を選択すべきである.
索引用語
gastric cancer in patients aged 80 years or older, gastrectomy for patients aged 80 years or older
日消外会誌 24: 2699-2704, 1991
別刷請求先
山口 正秀 〒602 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学第1外科
受理年月日
1991年6月5日
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