症例報告
広範な肝転移を認めたS状結腸腺腫内未分化癌の1例
北原 健志, 尾上 謙三*, 渡辺 慶太, 富永 修盛, 中口 和則, 中野 陽典
大阪食糧連合健康保険組合長堀病院外科, 病理*
S状結腸ポリープの一部に未分化癌が発生し,すでに広範囲な肝転移を有していた1例を経験した.
症例は60歳,男性.注腸造影X線検査,大腸内視鏡検査でS状結腸に山田IV型のポリープを認めた.内視鏡的ポリペクトミーを予定していたが,肝転移を発見したため開腹手術に変更した.切除したS状結腸ポリープは有茎性で大きさ10×8 mm,組織学的には大部分はvillo-tubular adenomaであったが,ごく一部に未分化癌が発生し,粘膜下層に浸潤していた.またリンパ節転移と肝転移がみられた.患者は術後5か月目に死亡した.
大腸未分化癌はきわめてまれで,本邦では5例目の報告である.自験例のような腺腫内に発生した微小な未分化癌でも悪性度はきわめて高く予後不良である.
索引用語
undifferentiated carcinoma of the colon, small cell carcinoma of the colon, invasive carcinoma in adenomatous colonic polyp
日消外会誌 24: 2809-2813, 1991
別刷請求先
北原 健志 〒560 豊中市東豊中町5-35-3 大阪食糧連合健康保険組合長堀病院外科
受理年月日
1991年7月3日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|