症例報告
胃全摘後の小腸大量切除による栄養障害の1治療例―Ursodeoxycholic acidの有用性―
今村 幹雄, 木村 光宏, 山内 英生
国立仙台病院外科
胃癌に対し胃全摘を施行後,絞扼性イレウスをおこし遠位側小腸大量切除を施行し,術後重篤な栄養障害を生じた症例について蛋白代謝,胆汁酸代謝,消化管ホルモン分泌および治療の面から検討した.
症例は59歳の男性で,胃癌に対し胃全摘術を施行し栄養状態が低下した時期に絞扼性イレウスを生じ回盲弁を含め遠位側小腸を230 cm切除した.術後,頻回の下痢便となり,体重は著明に減少し,また,牛乳不耐症,鉄欠乏性貧血,血中総胆汁酸濃度の低下などが発生した.これらに対し,経腸栄養とともにウルソデオキシコール酸,乳糖分解酵素などを投与することにより,臓器蛋白は上昇に転じ,排便回数は減少し,体重減少も止った.また,試験食摂取時の末梢血中総胆汁酸濃度は著明に上昇し,さらに食後のCCK分泌は維持された.
索引用語
massive resection of the alimentary tract, short bowel syndrome, treatment with ursodeoxycholic acid
日消外会誌 24: 2827-2831, 1991
別刷請求先
今村 幹雄 〒983 仙台市宮城野区宮城野2-8-8 国立仙台病院外科
受理年月日
1991年7月3日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|