原著
胃癌手術における腹腔洗浄細胞診の意義
田中 晃, 奥野 清隆, 中嶋 一三, 渡辺 勉, 藤井 良憲, 白山 泰明, 安富 正幸
近畿大学第1外科
胃癌手術の開腹直後に腹腔洗浄細胞診を施行した682例を対象とし,胃癌原発巣の病理組織所見と細胞診との関係について検討し,さらに腹腔洗浄細胞診の予後因子としての意義について考察した.682例の11.1%,切除例の7.2%,治癒切除例の2.7%に遊離癌細胞が陽性であった.細胞診陽性率はS2;14.8%,S3;28.8%,壁深達度ではm・smに陽性例はなく,漿膜面因子(ps)陰性;0.9%,陽性;15.2%であり,漿膜面浸潤と関係が深かった.肉眼型,組織型,浸潤増殖様式と細胞診の関係では,3型・4型,未分化型,浸潤性増殖(INFγ)に高率であり,さらにstage IVは22.5%と高率であった.肉眼的に治癒切除でも細胞診が陽性であれば,10年生存例を除き3年以内に腹膜再発で死亡し2年累積生存率は24.2%であり,肉眼的腹膜播種陽性例の2年生存率8.5%と有意差なく予後は不良であった.術中洗浄細胞診は正確な病期診断に有用であり,とくにS2,S3およびps(+)例では有意義である.
索引用語
peritoneal lavage cytology, intraperitoneal free cancer cell, prognosis of gastric cancer
日消外会誌 24: 2900-2905, 1991
別刷請求先
田中 晃 〒589 大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部第1外科
受理年月日
1991年9月4日
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