原著
肝細胞癌切除症例の術後再発に関する検討
松本 宗明, 中島 祥介, 福岡 敏幸, 久永 倫聖, 青松 幸雄, 木戸 潔, 滝 順一郎, 吉村 淳, 堀川 雅人, 中野 博重
奈良県立医科大学第1外科
肝細胞癌肝切除49症例のうち絶対的非治癒切除6例と術死3例を除く40例について,再発とその予後について検討を加えた.40例全体の無再発生存率は,1年57%,3年41%,5年26%で,観察期間中に25例(62.5%)の再発を認めた.腫瘍因子の中では,腫瘍径3 cm以上,門脈浸潤陽性例に高い再発率がみられた.切除肝切離面への癌浸潤の有無(TW)には再発との関連はみられなかった.肝切除量についての検討では,腫瘍径3 cm以下であれば亜区域以下の縮小手術でも良好な予後を期待できるものと考えられた.再発25例のうち22例(88%)が術後2年以内に再発し,再発後の累積生存率は,1年63%,2年26%,3年17%であった.肉眼型では多結節癒合型が,また組織学的には門脈浸潤陽性例では術後早期に再発し,再発後の予後も不良であることから,肝細胞癌治療成績の向上にはこれら症例への対策が重要であると考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, risk factors related to recurrence of hepatocellular carcinoma, disease free survival after hepatectomy, gross type of hepatocellular carcinoma, therapy for resected cases of hepatocellular carcinoma
日消外会誌 24: 2937-2943, 1991
別刷請求先
松本 宗明 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1991年9月4日
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