原著
痔核の既往と大腸癌の予後についての考察
藤高 嗣生, 西村 保彦, 松山 敏哉, 土肥 雪彦
広島大学医学部第2外科
大腸癌症例中痔核を合併または過去に指摘された患者は肛門出血が生じた際に症状を痣核によると考えて癌の病悩期間が延長する可能性がある.今回肛門出血を主訴とする大腸癌症例で痣核の既往がある症例とない症例の病悩期間と予後を比較した.病悩期間は痔核の既往がある症例で平均7.9か月,ない症例では平均5.2か月と既往がある症例で長くなる傾向を認めた.病悩期間を3か月ごとに区切ると痔核の既往がない症例では3か未満が52.9%,ある症例で29.6%を占めた.Stage I,II症例では病悩期間が3か月未満で3年生存率が85.7%3か月以上で49.8%,Stage III,IV,V症例では3か月未満で75.9%3か月以上で32.4%であり有意差を認めた.病悩期間と生存率に関連性はないという意見もあるが,今回の検討では肛門出血を主訴とする症例に関して病悩期間の短縮は予後を改善する可能性があり痔核患者の経験観察は慎重に行う必要がある.
索引用語
colorectal cancer, hemorrhoid, survivalrate
日消外会誌 24: 2977-2981, 1991
別刷請求先
藤高 嗣生 〒734 広島市南区霞1-2-3 広島大学医学部第2外科
受理年月日
1991年9月4日
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