症例報告
胆嚢摘除術および経十二指腸乳頭括約筋形成術を施行した腸チフス胆道系保菌者の1治験例
久保 章, 高橋 利通, 伊東 重義, 竹内 信道, 鈴木 良人
横須賀市立市民病院外科
本邦における腸チフスの発生は減少し年間100人程度になっているが,現在でも長期保菌者がその感染源となることがある.今回われわれは,胆道系長期保菌者を外科的治療で治癒せしめた症例を経験した.
症例は70歳,男性.糞便検査でチフス菌の排菌を指摘された.腹部超音波検査,computed tomography検査で胆石が認められ,十二指腸液検査でチフス菌が検出された.腸チフス胆道系保菌者と診断し胆嚢摘除術,経十二指腸乳頭括約筋形成術を施行した.術後,胆汁,糞便からの排菌は消失した.
退院1年後の十二指腸液検査,糞便検査でもチフス菌の排菌はなく治癒と判定した.
胆道系長期保菌者では,病巣の完全除去,再発・遺残結石の防止が除菌の成否を決める.そのため,症例により胆道ドレナージ手術も考慮する必要があると考えられた.
索引用語
typhoid biliary carrier, transduodenal-sphincteroplasty
日消外会誌 24: 3008-3011, 1991
別刷請求先
久保 章 〒240-01 横須賀市長坂1-3-2 横須賀市立市民病院外科
受理年月日
1991年9月4日
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