症例報告
十二指腸との内瘻を伴った虫垂子宮内膜症の1例
西田 禎宏, 裏川 公章, 中本 光春, 川口 勝徳, 佐古 辰夫, 神垣 隆, 原之村 博, 中江 史朗, 西尾 幸男, 五百蔵 昭夫, 植松 清, 岩越 一彦*, 今井 幸弘1)
神戸労災病院外科, 同 消化器内科*, 神戸大学医学部第1病理1)
本邦における虫垂子宮内膜症の報告は非常に少なく,また虫垂の特発性十二指腸瘻もまれである.今回われわれは十二指腸との内瘻を伴った虫垂子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は68歳.上行結腸癌にて当科入院となった.画像診断より虫垂十二指腸瘻,右卵巣嚢腫,上行結腸癌の術前診断を得,手術が施行された.虫垂は上行結腸の腸間膜側を上行し,屈曲して十二指腸のthird portion右下方で比較的強く線維性に癒着し,内瘻を形成していた.手術は癒着を剥離し十二指腸の瘻孔部を直接縫合閉鎖した.病理組織学的には虫垂の漿膜下層に腺腔構造を認め,内腔側に繊毛がみられたが,間質成分や出血巣は認めなかった.本例は無症状に経過し,閉経後に他疾患術後の病理学的検索にて偶然判明した,右卵巣に同病変を伴う虫垂子宮内膜症であったが,本症は骨盤内臓器にも併存することが多いため術前・術中の診断,検索に留意し,適切な手術が行われなければならないと思われた.
索引用語
endometriosis of appendix, appendicoduodenal fistula
日消外会誌 24: 3022-3026, 1991
別刷請求先
西田 禎宏 〒653 神戸市長田区御屋敷通3-1-34 サンタウンアコルデ603
受理年月日
1991年9月4日
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