原著
胃癌における術前腹腔内生理的食塩水注入による回収液細胞診とcancer antigen 125測定に関する研究
加藤 真史*, 沢 敏治, 木下 一夫, 中野 泰治, 北林 一男, 吉光 外宏
国立療養所敦賀病院外科, (*現 金沢医科大学一般消化器外科)
触指診および超音波検査,CTで腹水,腹膜腫瘤を認めなかった胃癌54例を対象として,生理的食塩水を腹腔内に注入し,その回収液の細胞診(以下,術前腹腔細胞診)とCA125の測定を行った.腹膜播種診断における術前腹腔細胞診のsensitivityは60%,specificityは95.5%,accuracyは88.9%であり,術中腹腔洗浄細胞診と同等の成績であった.腹膜播種例における回収液CA125値は血清CA125値と高い相関を示した.また,血清CA125値は,予後的漿膜面因子陽性(以下,ps(+))例1と同陰性(以下,ps(-))例で差を認めなかったが,回収液CA125値はps(+)例:101.61±0.46U/ml,ps(-)例:101.33±0.25U/mlで,ps(+)例において有意に高値を示した.なお,この検査による合併症は全く認めなかった.以上より,術前腹腔細胞診と回収液CA125の測定は腹膜播種の術前診断法として非常に有用であると考えられた.
索引用語
gastric cancer, peritoneal dissemination, preoperative peritoneal cytology, cancer antigen 125
別刷請求先
加藤 真史 〒920-02 石川県河北郡内灘町大学1-1 金沢医科大学一般消化器外科
受理年月日
1991年10月9日
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