原著
肝細胞癌の肝内進展病態と非癌部肝組織の線維化の程度との関連に関する研究
林 俊之
東京女子医科大学消化器外科学教室(主任:羽生富士夫教授)
肝細胞癌の発育および肝内進展病態に非癌肝の肝硬変の程度が及ぼす影響を知るために,243例の肝細胞癌切除症例について,腫瘍径と細胞異型度,そして被膜進展・門脈侵襲・副結節の陽性率を,肝硬変群と非肝硬変群の間で比較検討した.その結果,肝硬変群では径2 cm以下の細小肝癌が有意に多く(p<0.025),かつ細胞異型度は両群に差がないことから,肝硬変群では細小肝癌の発育が非肝硬変群より遅く,周囲の肝硬変の存在が発育に影響を及ぼしている可能性が考えられた.一方,被膜進展と副結節が腫瘍径2.0 cm以下の群で,門脈侵襲と副結節が径2.1 cm以上5.0 cm以下の群で,陽性率がそれぞれ肝硬変群に有意に高かった(p<0.05).以上より,高度な肝硬変を併存した肝細胞癌は,腫瘍が小さい時期には,膨張性の発育よりも,被膜に浸潤して,門脈に腫瘍栓をつくり,肝内転移を生じてゆく肝内進展をとりやすい性質を持っている可能性があると考えた.
索引用語
intrahepatic extension form of hepatocellular carcinoma, classification of liver cirrhosis, incidence of intrahepatic extensive factors of hepatocellular carcinoma
別刷請求先
林 俊之 〒162 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学消化器外科
受理年月日
1991年10月9日
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