原著
直腸癌に対する自律神経片側温存手術の内尿道口閉鎖能に及ぼす影響―臨床的・実験的検討―
鮫島 隆志, 山田 一隆, 春山 勝郎, 長谷 茂也, 桂 禎紀, 丹羽 清志, 鮫島 淳一郎, 石沢 隆, 島津 久明
鹿児島大学第1外科
直腸癌に対する自律神経片側温存手術の術後性機能,とくに逆行性射精に関与する内尿道口閉鎖能の保持について,臨床的および実験的に検討した.臨床的検討:男性の直腸癌治癒切除20例を骨盤内自律神経の両側温存,片側温存および両側切離の3群に分け,尿道閉鎖圧(MUCP)を尿道引き抜き圧測定方法により術後経時的に測定した.両側切離群のMUCPは著明な低下を示したが,片側温存群では術後3か月まで両側温存群に比べ低下傾向を示したのち,6か月以降には両側温存群の70~80%までに回復した.実験的検討:雄雑種成犬を用いて上述の3群を作成し,下腹神経の電気刺激下にMUCPを測定して比較検討を行った.両側切離群のMUCPは著明な低下を示すのに対し,片側温存群は術後1週目に両側温存群に比べ有意の低値を示したが,2週目以降の有意差はなかった.以上より,自律神経片側温存手術は直腸癌術後に高率に発生する逆行性射精の防止に有用な方法と考えられた.
索引用語
rectal cancer, internal urethral orifice, unilateral autonomic nerve preserving operation, urethral closure pressure profile, retrograde ejaculation
別刷請求先
鮫島 隆志 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1991年10月9日
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