症例報告
食道類基底細胞癌の1例
清水 秀昭, 尾沢 厳, 稲田 高男, 松井 淳一, 菱沼 正一, 固武 健二郎, 池田 正, 尾形 佳郎, 小山 靖夫
栃木県立がんセンター外科
症例は71歳男性.心窩部痛に対し内視鏡が施行された.上門歯列より30 cm,8時方向に10 mm大の小隆起を認めた.腫瘤の表面はやや不整で,辺縁は正常食道粘膜に覆われていた.内視鏡新病型分類による0-1型を考えた.低分化型扁平上皮癌の生検診断で,手術を施行.切除標本では,腫瘍の大きさは,13×10 mmで,病理組織診断は類基底細胞癌であった.downward growthの発育形式を示し,深達度はsmで,リンパ節転移,上皮内進展および脈管侵襲は認めなかった.術後化学療法を施行した.術後8か月の現在,再発の兆候なく健在である.
本症例は比較的早期の段階にある類基底細胞癌であり,その食道造影・内視鏡所見,肉眼形態は食道類基底細胞癌の臨床像の典型例を示すと思われる.
予後に関しては,悪性度の高い癌の1つと考えられてきたが,進行した癌に反して比較的早期の癌はさほど悪くないものと思われる.
索引用語
esophageal cancer, basaloid-(squamous) carcinoma, basal cell carcinoma
別刷請求先
清水 秀昭 〒320 宇都宮市陽南4-9-13 栃木県立がんセンター外科
受理年月日
1991年10月9日
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