症例報告
嚢胞液中CEAおよびTPAが高値を呈した良性多発性肝嚢胞の1治験例
福谷 明直, 角田 冨士男, 安藤 朗*, 平田 真人*, 景山 精二*, 小澤 利夫*, 迫 裕孝1), 沖野 功次1), 中根 佳宏1), 小玉 正智1)
竜王会小澤病院外科, 同 内科*, 滋賀医科大学第1外科1)
69歳女性の多発性肝嚢胞のうち2個の巨大嚢胞に対してドレナージ後,純エタノール注入を行い良好な結果が得られた.2個のうち1個の嚢胞液のcarcinoembryonic antigen(CEA)536.1 ng/mlおよびtissue polypeptide antigen(TPA)4,615 IU/mlの異常高値を認めた.過去にCEAおよびcarbo-hydrate antigen 19-9(CA19-9)の異常高値例の報告はあるが,CEAおよびTPAの異常高値の報告例はなかった.CEA,CA19-9,TPAは正常胆管上皮に存在することが証明されている.嚢胞壁上皮に炎症が波及するとこれら腫瘍マーカーの分泌が高まると推定された.したがって嚢胞液中の腫瘍マーカーが上昇しても必ずしも悪性変化を意味しないと考えられた.しかし嚢胞上皮の癌化の報告が増加しており,エタノール処理後も遺残嚢胞壁の癌化の可能性もあり長期のfollow-upは重要であると考えられた.
索引用語
multiple non-parasitic cysts of the liver, absolute ethanol injection after continuous drainage, tumor marker
別刷請求先
福谷 明直 〒520-21 大津市瀬田月輪町 滋賀医科大学第1外科
受理年月日
1991年10月9日
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