症例報告
術中門脈本幹損傷に対し門脈臍静脈吻合術を施行した肝細胞癌の1例
尾関 豊, 広済 芳男, 雑賀 俊夫, 松原 長樹
国立東静病院外科
症例は65歳,男性.近医で肝腫瘍を指摘され当院へ紹介された.各種画像診断で肝右葉後区域の11 cm大の肝細胞癌と診断した.門脈は後枝が単独で分岐し,その後で前枝と左枝に分かれる形態を示した.肝機能が良好であったので肝右葉切除術を施行したが,術中に門脈本幹を後枝と見誤り離断した.温存された門脈血流は左尾状葉枝のみとなり,肝不全は必至と思われた.離断した門脈断端の直接吻合は困難な状況であったため,臍静脈を再開通させて腸側門脈断端と端々吻合した.術後経過は良好で,術後の血管造影では吻合部の開存が確認された.
術中損傷は予防が大切であり,とくに肝門部のような重要な部位の脈管切離時には,切離してよいものかどうかの確認を十分に行うことが肝要である.不幸にして門脈離断を生じ直接吻合が困難な場合には,門脈臍静脈吻合は試みるべき方法の1つと思われた.
索引用語
portal vein injury during operation, porto-umbilical vein anastomosis
別刷請求先
尾関 豊 〒411 静岡県駿東郡清水町長沢762-1 国立東静病院外科
受理年月日
1991年10月9日
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