症例報告
十二指腸球後部潰瘍瘢痕に続発した閉塞性黄疸の1手術例
松本 日洋, 延沢 進, 青井 泰平, 青木 文夫, 山崎 一樹, 鹿野 信吾, 片柳 照雄, 工藤 功男*, 昌子 正実**
友愛記念病院外科, 同 放射線診断部*, 同 病理部**
症例は72歳男性,13年前に十二指腸潰瘍穿孔の手術歴があり,黄疸を主訴に入院した.約2時間の経過でReynoldsの五徴を呈し,緊急に経皮経肝胆管ドレナージで救命した.その後,胃内視鏡,低緊張性十二指腸造影検査で,上十二指腸曲の線状潰瘍瘢痕と内径5 mmの狭窄を認めた.腹部computed tomography(以下CT)検査では,膵頭部の腫大と膵管の拡張を膵頭部から体尾部に認めた.血管造影検査では,膵頭部に無血管野と同部に分布する動脈にsmooth narrowingを認めた.経皮経管胆管造影検査(pericutaneous transhepatic biliarygraphy,以下PTBG)では,辺縁不整な全周性閉塞を膵内胆管中心に認めた.以上より膵頭部癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.肉眼的に十二指腸乳頭部は,線状潰瘍瘢痕のため同定できなかった.組織学的には,総胆管壁内に神経と腺の増生を認めたが腫瘍性病変はなく,閉塞性黄疸の原因とは考えられなかった.閉塞性黄疸の原因が十二指腸潰瘍瘢痕と考えられた非常に興味深い症例であった.
索引用語
post bulbar ulcer, obstructive jaundice
別刷請求先
松本 日洋 〒306 茨城県猿島郡総和町関戸726 友愛記念病院外科
受理年月日
1991年10月9日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|