症例報告
総肝動脈瘤により総肝動脈閉塞を伴った膵頭部癌の1切除例
山神 和彦, 真辺 忠夫, 馬場 信雄, 戸部 隆吉, 奈良 政信*
京都大学第1外科, 国立療養所南京都病院*
総肝動脈瘤による総肝動脈完全閉塞をきたした膵頭部癌に対し血行再建を行わずに,門脈合併膵頭十二指腸切除術を施行しえた症例を経験したので報告する.症例は70歳,男性で主訴は黄疸であった.CT検査,MRI検査等により膵頭部癌と診断された.腹部血管造影にて総肝動脈は造影されず,固有肝動脈は主として腹腔動脈から胃動脈を介する経路,背膵動脈から膵十二指腸動脈を介する経路で血流をうけていた.手術時,完全閉塞を伴った総肝動脈瘤を認めた.胃十二指腸動脈の一時的遮断を行っても固有肝動脈は拍動を保持し,肝の色調の変化を認めなかった.以上より,血行再建を行わずに,側副血行路を温存し,門脈合併膵頭十二指腸切除術を施行した.術後経過は良好で合併症がなかったことから側副血行路は充分機能していると考えられた.
索引用語
aneurysm in common hepatic artery, pancreaticoduodenectomy, collateral circulation
別刷請求先
山神 和彦 〒536 大阪市城東区今福東2-2-33 大阪府立済生会野江病院外科
受理年月日
1991年10月9日
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