症例報告
鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄の2例
辻 福正, 木村 文敏, 山崎 良定, 山中 陽一*
公立宍粟郡民病院外科, 山中医院*
鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄は非常にまれな疾患で2例を経験したので報告する.
症例1は15歳,男性.主訴は嘔吐.自転車運転中転倒して腹部打撲し,嘔吐が持続するため受傷後104日目に外傷性小腸狭窄の診断の下に手術を施行した.手術はTreitz靭帯より約5 cm肛門側の空腸が線維性癒着により狭窄を呈しており,この癒着を剥離した.
症例2は52歳,男性.主訴は食後腹痛.自動車運転中溝に転落し上腹部打撲した.食後腹痛および胃部膨満感が改善せず,受傷後41日目に外傷性小腸狭窄の診断の下に手術を施行した.手術はTreitz靭帯より約3 cm肛門側の空腸に狭窄があり,同部位の腸切除および端々吻合を行った.予後は2例ともに良好であった.
鈍的腹部外傷後のイレウスに対しては,本症を念頭において小腸造影を施行することが極めて重要であると考えられる.
索引用語
delayed small bowel stenosis, blunt abdominal trauma
別刷請求先
辻 福正 〒671-25 兵庫県宍粟郡山崎町鹿沢93 公立宍粟郡民病院外科
受理年月日
1991年10月9日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|