原著
高齢者消化器外科患者の治療成績向上に関する工夫―主として代謝面よりの検討―
大柳 治正, 宇佐美 真, 笠原 宏, 野村 秀明, 金丸 太一, 古池 幸司, 具 英成, 加藤 道男, 斎藤 洋一
神戸大学医学部第1外科
高齢者消化器手術の治療成績を周術期管理の面から検討した.教室で22年間に切除術を施行した食道癌,胃癌,肝胆膵悪性腫瘍,大腸癌および胆石症の3,481症例を用い,前期,後期のそれぞれ11年間の術前術後合併症,リスク年齢の検討を行い,全体としては65歳を基準に,疾患別では食道癌根治術と膵頭十二指腸切除術は60歳,胃癌胃全摘術は70歳を基準に,高齢群と若年群に分け,手術侵襲と血中指標との関連,術後の血清蛋白,免疫指標の変動を比較し,長期予後の比較検討を行った.術前有合併症例は高齢群で多かった.高齢群の術後合併症発生頻度は前期の55%から後期の49%へ,術死率は10%から3%へ減少し,長期生存率の改善を認めた.その機序として,術中出血量の減少や麻酔法の改善による手術侵襲の抑制,積極的な代謝栄養管理により,侵襲ホルモン分泌や代謝変動がよくコントロールされていることより,それが予後の改善をもたらしたと考えられた.
索引用語
geriatric surgery, digestive surgery, pre- and post-operative complications, perioperative care, nutritional management
別刷請求先
大柳 治正 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1991年11月20日
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