原著
胃癌症例における臨床病理学的および癌細胞核DNA量からみた腹膜播種の要因に関する研究―ことに腹腔内遊離癌細胞核DNA量の検討―
魚返 英寛
福岡大学医学部第2外科教室
進行胃癌での再発形式は腹膜再発が多くその予測や防止に決定的な指標は少ない.今回胃癌手術症例110例に開腹時腹腔内洗浄細胞診を施行し,腹腔内遊離癌細胞の核DNA量を原発巣のそれと併せて顕微螢光法で測定し,遊離癌細胞陽性と陰性例に分けて原発巣の病理組織学的およびDNA ploldy patternを比較検討し腹膜播種の要因を検討した.腹腔内遊離癌細胞陽性例42/110(38.2%)は漿膜浸潤様式で顆粒状に多く,その面積は20 cm2を越えると有意に陽性率が高かった.また低分化型で,予後的漿膜因子陽性例に有意に陽性率が高かった.原発巣および遊離癌細胞の核DNA ploidy patternは陽性例で約90%がhigh ploidyであった.また術前生検標本とその原発巣のploidy patternの一致率は90.5%であった.したがって,進行胃癌で術前生検標本がhigh ploidy群の症例は漿膜浸潤陽性の場合,腹腔内遊離癌細胞陽性の可能性が非常に高いものと推測できた.
索引用語
gastric cancer, intraperitoneal irrigating cytology, intraperitoneal free cancer cells, cancer cell nuclear DNA histogram pattern, peritoneal recurrence
別刷請求先
魚返 英寛 〒814-01 福岡市城南区七隈7-45-1 福岡大学医学部第2外科
受理年月日
1991年11月20日
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