充実性低分化胃癌の臨床病理学的検討

大下　裕夫, 田中　千凱, 深田　代造

岐阜市民病院外科

　胃の低分化腺癌のうちで，充実型51例とスキルス型162例の臨床病理像を胃癌取扱い規約に準じて比較検討した．全胃癌に対する割合は充実型6.3％，スキルス型20.1％であった．肉眼分類は，充実型では2型，3型の潰瘍形成型が62.7％，スキルス型では4型が38.9％をしめていた．深達度はともにse，si（sei）症例が多く，早期癌の頻度は少なかった．肝転移は充実型13.7％，スキルス型3.1％で，充実型のほうが有意に多かった．しかし，リンパ節転移は充実型82.0％，スキルス型80.2％で両者とも高率で，差異はみられなかった．治癒切除率は充実型49.0％，スキルス型61.1％でともに低率であった．治癒切除例の5年生存率は充実型71.0％，スキルス型49.5％で，充実型の予後が有意に良好であった．充実型では肝転移やリンパ節転移の頻度が高いが，治癒切除例では良好な予後が期待できるので，積極的に根治術を行うべきであると思われた．

索引用語
poorly differentiated adenocarcinoma of the stomach, medullary growth pattern, scirrhous growth pattern

別刷請求先
大下　裕夫　〒500 岐阜市鹿島町7-1　岐阜市民病院外科

受理年月日
1991年11月20日

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