原著
多中心性発癌肝細胞癌症例の臨床病理学的検討
松田 政徳, 山本 正之, 茂垣 雅俊, 板倉 淳, 松本 由朗
山梨医科大学第1外科
病理組織学的に,(1)比較的小さく高分化な肝細胞癌の多発例,(2)比較的小さく高分化な肝細胞癌と,これより大きく低分化な肝細胞癌の併存例,(3)辺縁に分化度の高い肝細胞癌組織の残存した「noduleinnodule」の形態をとる腫瘍の多発例および併存例,を多中心性発癌症例(MC)とみなし,最近5年6か月間に切除した45例の複数の病変を有する肝細胞癌症例を対象としてMCの臨床病理学的特徴を検討した.45例中,病理組織学的にMCと考えられた症例は10例(22.2%)で,うち3例は肝内転移結節を伴っていた.肝内転移のみの32症例(IM)では,主病巣の組織学的被膜浸潤(75.0%),門脈侵襲(56.3%)が高頻度であったが,肝内転移を伴わないMCではそれぞれ,14.3%,0%と低頻度であった.MCの非癌部肝臓は慢性肝炎を呈する症例(60.0%,IM=15.6%)が多いものの,B型,C型肝炎との関係は明らかでなかった.MCのうち5例で,主病巣,副病巣の核DNA量を測定した.2例にDNA indexに差がみられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, multicentric occurrence, intrahepatic metastasis, flow cytometry, DNA index
別刷請求先
松田 政徳 〒409-38 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 山梨医科大学第1外科
受理年月日
1991年11月20日
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