大腸全摘後の尿中電解質，pHの変化とクエン酸製剤の効果

荒井　勝彦, 杉田　昭, 石黒　直樹, 諏訪　寛, 山崎　安信, 原田　博文, 郷　克巳, 小金井　一隆, 福島　恒男

横浜市立大学第2外科

　大腸全摘後は大腸の水分，電解質吸収機能の喪失により体内の水分，電解質が欠乏し，その結果，尿量の減少，尿pHの低下を来してくる．今回，潰瘍性大腸炎，大腸ポリポーシスに対して大腸全摘，J型回腸嚢肛門吻合術（IAA）20例，回腸人工肛門造設（ILE）8例に，尿分析を行った．尿量，尿中Na濃度，尿中pHはIAA，ILEともに対照群にくらべて有意に低下したが，尿中尿酸濃度は有意に高値を示した．これらの患者に対し尿アルカリ化剤であるクエン酸ナトリウムカリウム合剤を毎食後服用（3 g/day）させると，IAA，ILEともに尿中Na濃度，尿pHは上昇し，尿酸濃度は有意に低下した．大腸全摘後症例で，尿中電解質濃度および尿pHに異常がある場合には尿アルカリ化剤を投与して正常化し，かつ結石合併を予防することが可能であると考えられた．

索引用語
proctocolectomy, ileoanal anastomosis, ileostomy, urinary change

別刷請求先
荒井　勝彦　〒232　横浜市南区浦舟町3-46　横浜市立大学医学部第2外科

受理年月日
1991年11月20日

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