症例報告
仮性大動脈瘤の食道穿通による大動脈食道瘻の1手術例
渡部 宜久, 松森 正之, 中村 雅彦, 中村 和夫
神戸大学第2外科
きわめてまれな仮性大動脈瘤の食道穿通による大動脈食道瘻の1手術例を経験したので報告する.症例は70歳女性,主訴は吐血.平成2年9月2日吐血があり某院に緊急入院し,検査の結果大動脈浸潤を伴う胸部食道癌からの出血と診断され手術目的で9月20日に当科紹介入院した.入院時の内視鏡では胸部食道に,粘膜下を中心に発育した腫瘤と凝血塊が確認できた.入院当日の夜から再出血したため9月25日準緊急で手術を行った.大動脈に癒着した腫瘤の切離の途中大動脈から大量に出血しショック状態となったため,下行大動脈を常温下に単純遮断し胸部食道とともに合併切除して人工血管で置換したが,術後9日目に不整脈のため失った.切除標本の検討では腫瘤はすべて血栓で,食道に2.5 cm大動脈に1 cmの壁の欠損があり,下行大動脈から発生した仮性動脈瘤が食道に穿通し大動脈食道瘻を形成したものと判明したが仮性動脈瘤の原因は不明であった.
索引用語
aortoesophageal fistula, false aortic aneurysm, esophageal bleeding
別刷請求先
渡部 宜久 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学医学部第2外科
受理年月日
1991年11月20日
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