症例報告
胃憩室を伴ったBarrett食道腺癌の1例
臼杵 尚志, 村上 正和, 小松原 正吉, 寺本 滋, 川崎 誠治*, 三角 俊毅*, 唐土 善郎*, 山本 雅彦*, 河合 経三*, 小野 晶美*
岡山大学第2外科, 聖マリア病院外科*
Barrett食道に発生したと思われる食道腺癌で術前検査にて血清CEAの異常高値が認められた1症例を経験した.症例は60歳の男性で9年前からの巨大な胃憩室にて経過観察中であった.術前検査では下部食道に潰瘍形成を伴う腫瘤像を認め,血清CEA値は44.7 ng/mlと異常高値を示していた.切除標本にて本来の食道胃接合部位より9.3 cm口側まで腸上皮化成を伴った円柱上皮の部分を,また同部に島状に扁平上皮の残存を認めた.腫瘍部は中分化腺癌の所見を呈しており,深達度はa1,INF βであった.また噴門部のリンパ節にのみ転移を認めた.術後の血清CEA値は4日目に26.1 ng/mlと速やかに減少したが,その後減少が遅延し,精査を行ったところ,手術より2か月後に左の肋骨への転移巣が発見された.血清CEA値の測定は経過観察に有用であった.
索引用語
Barrett esophagus, adenocarcinoma
別刷請求先
臼杵 尚志 〒700 岡山市鹿田町2-5-1 岡山大学医学部第2外科
受理年月日
1991年11月20日
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