症例報告
肝内結石症による肝外側区域切除10年後に胆管細胞癌を発症した1例
甲斐 信博, 浦 一秀, 古井 純一郎, 山田 雅史, 富岡 勉, 小原 則博, 松元 定次, 江藤 敏文, 瀬川 徹, 元島 幸一, 角田 司, 井沢 邦英*
長崎大学医学部第2外科, 同 救急部*
肝内結石症に対する肝外側区域切除術の10年後に胆管細胞癌と診断され,特異な経過をたどった1例を報告する.症例は57歳の男性.47歳の時,急性胆嚢炎の診断により胆嚢摘出術を施行されたが,その後も胆管炎症状が持続.精査の結果,肝左葉の肝内結石の診断により同年,肝外側区域切除を施行された.51歳の時,総胆管結石の診断で内視鏡的乳頭切開術をうけた後は無症状にて経過していた.今回,発熱および心窩部痛にて発症.心窩部には外胆汁瘻の形成を認めた.精査の結果,肝断端付近に発生した腫瘍が腹壁,横隔膜などに広範囲な浸潤をきたしていた.入院後,腹腔内膿瘍が心嚢へ穿破し,化膿性心外膜炎,心タンポナーデを併発し,入院後3か月で死亡した.肝内結石症の診療に際しては,同時性および異時性の胆管癌合併を常に考える必要があり,肝内胆石症に対する手術においては,拡張胆管を含めた肝切除術が必要であると考えられた.
索引用語
intrahepatic stones, cholangiocarcinoma, hepatectomy
別刷請求先
甲斐 信博 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医学部第2外
受理年月日
1991年11月20日
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