症例報告
胆汁CEA高値により診断しえた先天性肝内胆道拡張症併存肝内胆管癌の1例
永野 浩昭*, 佐々木 洋, 今岡 真義, 柴田 高**, 桝谷 誠三, 大橋 一朗, 石川 治, 岩永 剛
大阪府立成人病センター外科, (*現・大阪大学第2外科, **現・豊中市立病院外科)
症例は50歳女性.主訴は右側腹部痛,発熱.腹部超音波検査,腹部computed tomography検査,腹部血管造影検査などの画像所見では,肝内胆管の拡張と肝内結石を認めるのみで,悪性腫瘍の所見はなかった.経皮経胆管造影検査時に採取した,胆汁中のcarcinoembryonic antigen(以下CEA)が8,490 ng/mlと高値を呈したことから,先天性胆道拡張症に悪性腫瘍の併存を疑い,肝左葉切除術を施行した.術後の組織学的な検索において,慢性炎症により肥厚した胆管壁の一部に肝内胆管癌の併存を確認した.嚢胞液中,胆汁中のCEAについて本邦報告例を検討したところ,良性疾患の中で8,490 ng/mlという高値を呈した症例の報告はなかった.以上,本症例は肝内に限局した先天性胆道拡張症(戸谷V型)に併存した肝内胆管癌というまれな症例であるとともに,胆汁中のCEAの異常高値は,悪性診断の指標の1つになる可能性が示唆された.
索引用語
intrahepatic bile duct carcinoma, congenital bile duct dilatation, CEA level in bile juice
別刷請求先
永野 浩昭 〒553 大阪市福島区福島1-1-50 大阪大学医学部第2外科
受理年月日
1991年11月20日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|