症例報告
核DNA量の解析が悪性度診断に有用であった非機能性膵島腫瘍の1例
須藤 隆之, 小野 貞英, 佐々木 功典1), 菅井 有2), 佐々木 亮孝, 玉沢 佳之, 豊島 秀浩, 大森 英俊, 阿部 正, 菅野 千治, 斉藤 和好3), 下遠野 秀文4)
岩手医科大学第1病理1), 同 臨床病理2), 同 第1外科3), 同 第1内科4)
症例は60歳男性で集団検診にて肝機能異常を指摘され,入院精査を受けたところ膵尾部に腫瘤が発見され,膵尾部腫瘍の診断下に膵体尾部,脾合併切除術を施行された.臨床的にホルモン過剰生産に伴う症状を呈さず,組織化学検査でグリメリウス染色,クロモグラニン染色,NSE染色がいずれも陽性であり,電顕にて内分泌顆粒が証明された.また,血管侵襲像を認めたため非機能性膵島細胞癌と組織学的に診断された.Flow cytometryにより,細胞核DNA量解析を行ったところ,標本採取部位11か所中9か所でDI=1.36のaneuploidyを,2か所でDI=1.36,1.55の2クローンが混在していた.DNA ploidyからも病理組織診断が支持された.しかしながら,DNA合成期細胞の割合は小さく,細胞の増殖能は低いことが示唆された.
索引用語
nonfunctioning islet cell tumor, flow cytometry
別刷請求先
須藤 隆之 〒020 盛岡市内丸19-1 岩手医科大学第1病理
受理年月日
1991年10月9日
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