原著
膵癌と腫瘤形成性+炎の鑑別における腫瘍マーカーの経時的測定の意義
山下 好人, 鄭 容錫, 横松 秀明, 仲田 文造, 澤田 鉄二, 金銅 康之, 金 光司, 曽和 融生
大阪市立大学医学部第1外科
腫瘤形成性膵炎(tumor-forming pancreatitis:TFP)は各種画像診断を用いても膵癌との鑑別が困難なことが多い.今回,両者の鑑別診断における腫瘍マーカーの意義について検討した.対象は,膵癌82例,慢性膵炎46例(TFP 19例)であった.SPan-1抗原,CA19-9,DU-PAN-2,CEAの膵癌における陽性率はそれぞれ93.0%,85.4%,63.0%,63.8%で,慢性膵炎における偽陽性率はそれぞれ28.0%,42.9%,11.1%,20.0%,TFPにおいてはそれぞれ36.8%,50.0%,20.0%,25.0%であった.次にTFPと膵癌の鑑別における正診率はSPan-1抗原:86.7%,CA19-9:78.1%,DU-PAN-2:66.7%,CEA:66.7%とSPan-1抗原およびCA19-9が高かった.またSPan-1抗原,CA19-9,CEAの値を初診時および約1か月後に測定すると膵癌症例では上昇傾向を示すのに対し,TFP症例では上昇傾向は示さず,これらの経時的な測定の有用性が示唆された.
索引用語
tumor marker, tumor-forming pancreatitis, pancreatic cancer
日消外会誌 25: 1222-1227, 1992
別刷請求先
山下 好人 〒545 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1992年1月8日
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