症例報告
体外手術により切除した内側区域から前区域を占める肝腫瘍の1例
田村 勝洋, 矢野 誠司, 橋本 幸直, 長見 晴彦, 板倉 正幸, 石田 徹, 井上 康, 中川 正久, 中瀬 明
島根医科大学第1外科
中肝静脈を巻き込み,左右肝静脈と大きな肝内門脈枝にはさまれた内側区域から前区域にまたがる腫瘍に対し,比較的出血の少なくてすむ右3区域切除を行い,摘出した右3区域を冷却臓器保存液中に浸漬して体外手術により内側および前区域を切除し,後区域を同所性に自家移植した.本法は前・後区域間の広範囲な肝実質切離を無血下に行うので通常の中央2区域切除より出血は少なく,無肝期はないので安全に行える術式である.本症例では術中術後の総輸血量3,600 mlであった.自家移植肝の血流再開直後より動脈血中ケトン体比は危険域を脱し術翌日からは安全域に入った.肝細胞障害は術後4日目に正常化したがそれ以後も高ビリルビン血症は数日間遷延した.移植肝の胆管ドレナージの胆汁排出や胆汁中直接型ビリルビン濃度はその生着機能の確認に有用であった.術後3か月の現在,肝機能のすべての指標は正常値を保っている.
索引用語
extracorporeal hepatectomy of the medial and anterior segments, autotransplantation of the posterior segment of the liver, in situ right trisegmentectomy of the liver
日消外会誌 25: 1287-1291, 1992
別刷請求先
田村 勝洋 〒693 出雲市塩治町89-1 島根医科大学第1外科
受理年月日
1992年1月8日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|