症例報告
肝転移を来たした腫瘍径7 mmの直腸カルチノイドの1切除例
岩崎 誠, 山際 健太郎, 中村 菊洋*, 野口 孝**
岩崎病院外科, 尾鷲総合病院外科*, 三重大学第1外科**
症例は70歳,男性,肝腫瘤の精査目的で入院.ultrasonographyで肝S6,S7に高エコーの腫瘤を認め,computed tomographyで低吸収域として描出され,血管造影にてS6,S7以外にS3にも濃染される腫瘤を認め,転移性肝腫瘍の診断で肝動脈塞栓術を施行した.原発巣の検索にて直腸肛門鏡で肛門輪より8 cm,6時方向の直腸に中心部が陥凹する扁平な腫瘍を認め,経肛門的に局所切除した.腫瘍は7×6 mmと小さく,割面は黄白色調で,組織学的にSogaらの分類でE型(混合型)の直腸カルチノイドと診断され,壁深達度smでぁったが,静脈侵襲が高度陽性であった.肝以外に転移がなく,肝部分切除を施行し,組織学的に直腸カルチノイドの肝転移と診断された.術後2年3か月の現在健在である.腫瘍径1 cm未満,壁深達度smの直腸カルチノイドが転移することは極めてまれであるが,自験例は静脈侵襲が陽性で肝転移を来しており,直腸カルチノイドの悪性度と術式の決定には腫瘍径や壁深達度のみならず,脈管侵襲の有無が重要と思われた.
索引用語
small rectal carcinoid, liver metastasis, vascular invasion
日消外会誌 25: 1339-1343, 1992
別刷請求先
岩崎 誠 〒514-01 三重県津市一身田町333 岩崎病院外科
受理年月日
1992年1月8日
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