原著
肝細胞癌剖検例の検討―リンパ節転移に関して―
高 済峯, 西和田 敬, 吉川 周作, 八木 正躬, 中島 祥介1), 中野 博重1)
奈良県立三室病院外科, 奈良県立医科大学第1外科1)
肝細胞癌の肝内進展,肝外進展の特徴を知るため,20例の剖検例の臨床病理学的検討を行った.
肝内進展では,血管侵襲,肝内転移とも単結節型では軽度であるのに対し,その他の肉眼型の腫瘍のほとんどは高度であった.肝外進展では,リンパ節転移はNOが8例,N3が12例であった.遠隔臓器転移は,肺(11例),副腎(6例)に多かった.遠隔臓器転移を認めなかった4症例はすべて単結節型であり,高度の肝硬変にて死亡した.TNM分類は単結節型でIが1例,IIIが1例,IVAが2例であった以外,すべてIVBであった.
肝外進展の剖検前診断は困難であり,治療方針決定上の問題点と思われた.根治切除に際しては肝門部,膵頭部を中心としたリンパ節郭清を行うべきであると思われた.
肝外進展の少ない単結節型腫瘍で,高度の肝硬変を伴うものは,肝移植の適応となりうると思われた.
索引用語
autopsy cases of hepatocellular carcinoma, tumor spread, lymph node metastasis, indication for liver transplantation
日消外会誌 25: 1965-1968, 1992
別刷請求先
高 済峯 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1992年3月11日
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