原著
大腸低分化腺癌25例の臨床病理学的検討
宮原 栄治, 池尻 公二, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 矢加部 茂, 朔 元則
国立福岡中央病院外科
1979年1月から1989年12月までに経験した大腸低分化腺癌25例について臨床病理学的に検討した.低分化腺癌は大腸癌全体(600例)の4.2%であり,高分化腺癌と比較し右側結腸に発症する割合が多い傾向(p<0.05)があったが,右側および左側結腸癌症例において,生存率に有意の差を認めなかった.5年生存率は,低分化腺癌全体で18.6%で,高・中分化腺癌と比較し,有意に不良であった(p<0.01).低分化腺癌では,大腸癌取扱い規約上,stage IV,V症例が17例と高度進行例が多く,このため予後不良であると考えた.しかし,stage II,IIIの比較的早期の症例で5年生存率を比較してみても,低分化腺癌では22.6%であり,高・中分化腺癌と比較し予後の違いは明白であった(p<0.01).つまり,大腸の低分化型腺癌では単に手術時すでに高度に進行している症例が多いということのみならず,その生物学的悪性度が予後に大きく関与していると考えられた.
索引用語
poorly differentiated adenocarcinoma, colorectal cancer
日消外会誌 25: 1984-1988, 1992
別刷請求先
朔 元則 〒810 福岡市中央区域内2番2号 国立福岡中央病院外科
受理年月日
1992年3月11日
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