症例報告
粘液産生膵癌の術後長期生存の1例
田村 卓巳, 近石 恵三, 若林 久男, 前場 隆志, 田中 聰
香川医科大学第1外科
粘液産生膵癌は予後の良い膵管癌として,近年注目されてきた.われわれは術後5年生存中の粘液産生膵癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳女性で,主訴は全身惓怠感と口渇.特徴的な内視鏡十二指腸乳頭所見,endoscopic retrograde cholangiopancreatography(以下ERCP)所見より“いわゆる粘液産生膵癌”と診断し,膵全摘術を施行した.主膵管は全長にわたり拡張し,膵頭部主膵管内に腫瘍組織の乳頭状増殖を認めた.組織学的には非浸潤性の乳頭状腺癌で,リンパ筋転移もなかった.現在,本症例は再発の徴候なく,また日常生活上特に制限なく術後5年経過している.
粘液産生膵癌は,その特徴的な進展様式のために切除範囲についてまだ議論が多いが,長期生存が十分期待できる癌であるだけに,膵全摘術を含めて根治性を考慮した手術術式を選択する必要がある.
索引用語
mucin-producing pancreatic cancer, long-term survival, total pancreatectomy
日消外会誌 25: 2023-2026, 1992
別刷請求先
田村 卓巳 〒761-07 香川県木田郡三木町池戸1750-1 香川医科大学第1外科
受理年月日
1992年2月12日
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