症例報告
癌多発家系に発症した19歳直腸癌の1例
坂本 一博, 野崎 浩, 石井 康祐, 林田 康男, 榊原 宣
順天堂大学医学部外科学教室(外科学第1)
直腸癌が若年者に発症することはまれであり,20歳未満の直腸癌の本邦報告例は51例にすぎない.最近,癌多発家系に発症した19歳の直腸癌の1例を経験したので報告する.
症例は19歳,男性.主訴は下痢,血便.6か月前より下痢,血便出現.近医を受診,直腸癌と診断され,手術目的で当科入院.家系調査で父系の3世代38人中11例に癌患者を認めた.大腸癌は自験例を含め父親,祖父,および父親の従弟1人の計4人であった.注腸造影X線検査で,大腸癌取扱い規約にいうRa~Rsに約12 cmの全周性狭窄像を認め,低位前方切除術を施行した.切除標本は大きさ12×8 cmのびまん浸潤型直腸癌で,組織学的には粘液癌であった.術後2年6か月後に下腹部に腫瘍を認め,化学療法・放射線療法後に摘出術を施行した.組織学的には粘液癌であったが,ほとんど壊死におちいっていた.現在初回手術より約4年経過しているが,再発なく経過している.
索引用語
rectal cancer in young adults, cancer family syndrome
日消外会誌 25: 2050-2054, 1992
別刷請求先
坂本 一博 〒113 文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第1外科
受理年月日
1992年3月11日
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