原著
術後補助療法別にみた食道癌術後免疫能の変動―積極的栄養療法の意義―
新津 頼一, 石田 薫, 木村 慶子, 岡本 和美, 村上 弘治, 寺島 雅典, 佐藤 信博, 池田 健一郎, 前沢 千早, 根本 ひろ子, 肥田 圭介, 斎藤 和好
岩手医科大学第1外科
積極的な栄養管理のもとに,食道癌術後の補助療法を施行し,術後の免疫能の推移を検討した.1984年9月から1989年12月までに,切除術を施行した胸部食道癌151例を対象とした.術後の補助療法は,頸部上縦隔に50 Gyを照射した照射群,CDDP 50~75 mg/mm2,VDS 3 mg/mm2を投与した化療群,頸胸腹部の3領域にわたるリンパ節隔清を行い補助療法は行わない手術単独群,の3群に分け検討した.栄養療法は,経腸栄養を主体に40 Kcal/kgの熱量投与を行った.免疫の各パラメータは,手術単独群では,術後4~6週で術前値に回復した.化療群においても,手術単独群と同様の推移がみられた.一方,照射群では,栄養療法の併用にも関わらず免疫能の低下,特に末梢血リンパ球数,T細胞数,B細胞数,helper T cell,cytotoxic T cell,NK細胞数の低下がみられた.しかし重篤な感染症の併発もなく,補助療法の完遂率,開始病日,施行期間においては,満足のいく結果が得られ,栄養療法の意義を認めた.
索引用語
esophageal cancer surgery, post-operative adjuvant therapy, helper T-cell, NK cell, enteral nutrition
日消外会誌 25: 2069-2075, 1992
別刷請求先
新津 頼一 〒020 盛岡市内丸19-1 岩手医科大学第1外科
受理年月日
1992年4月1日
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