原著
リンパ節転移よりみた上部胃癌切除例の検討
三浦 敏夫, 平野 達雄*, 草野 裕幸*, 中越 享*, 清水 輝久*, 石川 啓*, 川口 昭男*, 宮下 光世*, 下山 孝俊*, 綾部 公懿*, 富田 正雄*
長崎大学医療技術短期大学部, *長崎大学医学部第1外科
上部胃癌切除294例について,占居部位・漿膜面浸潤・組織学的壁深達度別に所属リンパ節の転移を検索し,術式の選択・適応について検討した.切除全胃癌中21.3%を占め,男女比は2.7:1,平均年齢は60.0歳であった.胃癌取扱い規約によれば,Cに限局するものは129例で,早期癌は15.0%であった.術式は胃全摘214例,噴切52例,その他28例であった.リンパ節転移は,早期癌ではn(-)であったが,pmで#2・3に7.7,30%,ssβで#1・3に40%,#7・9に20%,#6・10・11・13・14に10%,ssγでは#4s・4d・16に37.5,12.5,12.5%の転移をみた.Cの漿膜面浸潤と#4d・5・6の転移は,S0S1はn(-)であったが,S2ではそれぞれ2.8,11.1,5.6%の転移をきたし,S3では21.4,14.2,7.1%であった.5年および10年生存率は全摘で43.1%,40.9%,噴切で32.5%,27.5%で,全摘が優れていたが有意差はなかった.以上より上部胃癌の噴切の適応はS1までのもの,組織学的にはssγまでにとどまるものである.
索引用語
adenocarcinoma of the upper part of stomach, total gastrectomy, proximal gastrectomy, lymphnode metastasis
日消外会誌 25: 2083-2090, 1992
別刷請求先
三浦 敏夫 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医療技術短期大学部
受理年月日
1992年5月13日
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