原著
胆嚢内胆汁の粘度特性に関する臨床的実験的研究―絶食による変化について―
斉田 芳久
東邦大学外科学第3講座
術後急性無石胆嚢炎の成因としては,胆汁の濃縮粘稠化が重要といわれている.そこで各種条件下における胆汁粘度の直接的測定,分析を試みた.臨床例からは正常胆嚢内胆汁の粘度特性を測定した.またイヌにて絶食による胆嚢内胆汁の粘度変化を,無処置絶食,胆嚢収縮,幹迷走神経切離(迷切)の各条件下にてレオロジー的手法を用いて解析した.ヒト正常胆嚢内胆汁の粘度は,非ニュートン粘性係数2.63±0.68,粘性指数0.98±0.01で,構造粘性を示した.イヌでは,絶食により粘度は有意に上昇し,その傾向は迷切,無処置,胆嚢収縮の順に強かった.しかし,胆汁のレオロジー的特性から,生理的なずり速度のかかる状況では,絶食による影響は少なくなり,また迷切による胆汁粘度上昇は,有意な差でなくなった.以上から胆汁は生理的に,濃縮だけでは排出障害を引き起こさず,術後急性無石胆嚢炎の発生には,絶食および迷切以外の因子の関与が存在することが示唆された.
索引用語
bile-viscosity, gallbladder, acute acalculous cholecystitis rheology, starvation
日消外会誌 25: 2129-2138, 1992
別刷請求先
斉田 芳久 〒153 目黒区大橋2-17-6 東邦大学大橋病院第3外科
受理年月日
1992年4月8日
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