症例報告
S状結腸癌と重複してみられた胃内分泌細胞癌の1例
中本 光春, 川口 勝徳, 中江 史朗, 西尾 幸男, 裏川 公章, 五百蔵 昭夫, 植松 清, 藤盛 孝博*
神戸労災病院外科, 神戸大学医学部第2病理*
胃内分泌細胞癌は悪性度が高く予後不良とされている.今回S状結腸癌と重複してみられた胃内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は79歳男性で,空腹時心窩部痛を主訴に精査したところ,胃幽門前庭部の巨大な2型の腫瘍とS状結腸の1'型の腫瘍を発見し,胃とS状結腸の同時性重複癌の診断で手術を施行した.S状結腸は術前診断通り,pmに達する高分化型腺癌であった.胃の腫瘍は組織学的に小型から中型の異型細胞がシート状に配列しび漫性に増殖していた.腫瘍細胞密度は高く,核は多形性に富み,N/Cは高く,クロマチンの増量もみられた.特殊染色の結果,Grimelius染色陽性,NSE陽性,CEA陰性であったことより,胃内分泌細胞癌と診断した.深達度ssβ,INFβ,ly3,V3,H0,P0,n0であった.術後経過は良好であったが,14か月目に巨大な肝転移が発見され,17か月目に肝不全で死亡した.
索引用語
endocrine cell carcinoma of stomach, double cancers of stomach and colon
日消外会誌 25: 2171-2175, 1992
別刷請求先
中本 光春 〒673 明石市別所町9-12
受理年月日
1992年4月1日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|